大学院体験記(臨床疫学編)

富山市まちなか診療所の渡辺一海です。

私は2022年4月に富山大学の大学院に入学、2025年3月に卒業し、博士号を取得しました。大学院期間も県からいただいた奨学金返済のための義務年限にするために、週4日の診療を続けてきました。医局の先輩で富山大学の大学院に行った方がおらず、「あの時これを知っておけばよかった」など感じることもいくつかあったので、この体験記が今後同じ道を歩む方にとって参考になればうれしいです。

(私は、「医学部 疫学・健康政策学講座」で大学院生をしていました。一部、この講座であったから、という内容も含まれています。ご了承ください。)


○全体を通して

専攻する内容にもよりますが、週4日仕事しながらでも大学院を卒業することは可能です。特に、データサイエンスに関しては、生物・化学実験と違って取り組む時間帯を自分の生活にあわせてアレンジできるので、やりやすいと思います。


 授業計画には「木曜3限 ○○学」とか書いてあっても、実際には特定の1日だけ、あるいは時間外の動画視聴などで単位を認められるものが多かったです。他、17時~18時半に行われるハイブリットセミナーに16回の出席(年8回程度開催)などもありますが、仕事の合間でもある程度できるかと思います。そして、卒論が最も大切です。指導教官に聞いたところによると、可能なら最終学年10月までに2本アクセプトが望ましいです(審査もあまり厳しくなく認められるらしいです)。ただ、1本でも英文査読誌に“投稿中”だと、権利はもらえます。このような場合、審査は厳しめで、論文を通すため、教育的な側面が強くなります。


 論文のテーマですが、新たに一から調査を行うこともできなくはないですが、疫学研究はその規模(数千~数万人を対象としたもの、アンケートでも数百人を対象としたもの)が重要であり、立案から実施にはかなり努力がいります。また、「質問紙を作成する場合、それだけで妥当性を検証した一本の論文を書くべき」と教わったので、調査票を作りもハードルが高いと感じています。 初心者は、まずは講座のデータを使って1本論文を書くことがお勧めです。ちなみに、准教授には、同じようなテーマで3回学会発表すると論文一本書けると言われましたが、たしかにその通りかなと感じました。


 なお、私は富山大学医学部医学科の研究医養成プログラムを修了していたため、3年で卒業することができました。他の方法として、第一著者の原著論文がIF5以上のジャーナルに掲載または受理された場合も、短期修了可能のようです。


私自身、大学院を修了して、見える景色はかなりかわりました。自分の手持ちの武器が増えたような感覚です。より俯瞰的に、広い視点でものごとを考えられるようになりました。また、その分野の専門家として扱ってもらえます。診療を色々な視点から見つめ直すことができ、仲間も増えるので、興味のある方はぜひ大学院進学をチャレンジしてほしいと思います。

(詳しく知りたい方にはさらに情報を提供できればと思うので、お問い合わせフォーム もしくはLINE公式アカウントよりご連絡ください)